• 検索結果がありません。

細胞分裂軸の制御に関する新たな分子メカニズムを解明 研究活動 | 研究/産学官連携

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2018

シェア "細胞分裂軸の制御に関する新たな分子メカニズムを解明 研究活動 | 研究/産学官連携"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

【ポイント】

LRRK1 蛋白質の発現を抑制すると、スピンドル微小管の傾きがランダムになり、細胞 の分裂方向が異常になる。

LRRK1 は中心体で、細胞分裂(M)期キナーゼ PLK1 及び CDK1 によって活性化さ れる。

○ 活性化したLRRK1は中心体構成蛋白質CDK5RAP2をリン酸化し、中心体の微小管 形成活性を促進する。

○ その結果、中心体からの星状体微小管の形成が促進され、スピンドル微小管の傾き が制御されている。

細胞分裂軸の制御に関する新たな分子メカニズムを解明

名古屋大学大学院理学研究科(研究科長・松本 邦弘)生命理学専攻の花房 洋 (はなふさ ひろし)講師、松本 邦弘(まつもと くにひろ)教授らのグループは、 LRRK1と呼ばれるリン酸化酵素が、スピンドル微小管(紡錘体)の傾きを制御し、 細胞の分裂方向をコントロールしていることを明らかにしました。

細胞の分裂方向のコントロールは、脳の形成や器官(腸や血管、肺など)を形 づくる上で非常に重要なステップです。細胞の分裂軸は、細胞分裂の際形成さ れるスピンドル微小管の傾きで規定されていることが知られていました。

今回研究グループは、LRRK1とよばれるリン酸化酵素の発現を低下させると、 中心体から伸びる星状体微小管の形成が消失し、スピンドル微小管の傾きがラ ンダムになり、結果として、細胞分裂軸が異常になることを見出しました。さら に、その分子メカニズムを解析したところ、LRRK1は中心体で活性化し、小頭症 原因遺伝子の1つCDK5RAP2をリン酸化することで、中心体の微小管形成能力を 促進していることがわかりました。興味深いことに、LRRK1によるリン酸化ドメ インを欠失したCDK5RAP2は、マウスで小頭症を発症することが知られており、 LRRK1 による細胞分裂軸の制御機構は、脳の形成に重要な可能性が考えられま す。

なお、この研究成果は、7月20日英国時間16時に『Nature Cell Biology』 のオンライン版に掲載されました。

(2)

【背景】

細 胞 が ど の方 向 に分裂 す る か コ ントロ ー ル され る こ と は 、 細 胞 の 運命決 定 や 体の 器 官を形作る上で非常に 重要なステ ップです。 例 えば脳の神経幹細胞は 、胎児の時期に 対称分裂によって幹細胞の数を増加させ、その後、非対称分裂によって幹細胞から神経 細胞を産み出していることが知られています。この胎児の時期に神経幹細胞が十分に増 殖できなければ、小頭症につながることがわかってきています。このような神経幹細胞の 対称分裂/非対称分裂は、細胞の分裂方向で決定されていると考えられています。また 体の器官の形成では、細胞の分裂方向が協調的にコントロールされることで、血管や腸 のような機能的な管が形成されていきます。

細 胞 が ど の 方 向 に 分 裂 す る か は 、 ス ピ ン ド ル 微 小 管 ( 紡 錘 体 ) の 向 き で 規 定 さ れ てお り 、こ の 向 き の 決 定 に は 、 中 心 体 か ら 伸 び る 星 状 微 小 管 が 重 要 な 働 き を し て い ま す 。 中心体は、微小管を産み出す中心 的な 器官 であ り 、こ こか ら伸びた星 状体微小管は細胞膜と相互作用し、 ス ピ ン ド ル 微 小 管 の 傾 き を コ ン ト ロ ールする力を発生させていることが 知られています。

【研究の内容】

今回研究グループは、RNAi を用 いて LRRK1 と呼ばれるリン酸化酵 素の発現を抑制 する と 、 スピ ンドル 微 小 管 の 傾 き が ラ ン ダ ム と な り 、 細 胞 の 分 裂 軸 が 異 常 に な る こ と を 見 出しました。 通常の細胞 は、ス ピンドル 微小管が 接着面に対し水平 に配 向さ れ、細 胞分 裂時に2つの娘細胞が両方とも接着できるようになります(図1左半分)。一方、LRRK1 の 発現を人為的に抑制すると、星状体微小管の形成がなくなり、スピンドル微小管の傾きが ランダムになります。その結果、細胞分裂時に片方の娘細胞しか接着できず、接着できな かった娘細胞は 細胞 死 を引き起 こ すこ と がわか りました (図 1右 半分: 矢 印) 。さら にその 分子機構を解析したところ、LRRK1は、細胞分裂期に重要なキナーゼPLK1及びCDK1 によって中心体で活性化され、中心体構成蛋白質 CDK5RAP2 をリン酸化することを明ら かにしました(図2)。CDK5RAP2 は、中心体の微小管形成活性に必須なgTuRC 複合体 を 活 性 化 す る こ と が 知 ら れ て い ま す 。LRRK1 は CDK5RAP2 を リ ン 酸 化 す る こ と で 、

(3)

CDK5RAP2によるgTuRC複合体の活性化を促進し、結果として中心体の微小管形成機 能を促進していました(図2)。

このように LRRK1 は中心体の微小管形成活性を促進することで、星状体微小管の形 成を促し、スピンドル微小管の傾きをコントロールし、細胞の分裂方向を決定していること を明らかにしました。

【成果の意義】

背景でも述べたように、細胞の分裂軸の制御は、細胞自身の運命決定や器官の形作り に重要です。本研究では、そのような細胞分裂の方向決定の分子メカニズムの一端を明 らかにしました。また、ヒト CDK5RAP2 に異常があると、小頭症を発症することが知られて い ま す 。 小 頭 症 は 、 脳 の 形 成 初 期 ( 胎 児 の 時 期 ) に 神 経 幹 細 胞 が 十 分 に 増 殖 で きず、 脳のサイ ズが小 さ くな っ て し ま う 病 気 で す 。 興 味 深 い 事 に 、LRRK1 に よ る リ ン酸化ドメインを欠失させた CDK5RAP2 をマウスに導入 す る と 、 小 頭 症 を 引 き 起 こ す 事 が 報 告 さ れ て い ま す 。 LRRK1 に よ る CDK5RAP2 のリ ン酸 化は 、脳 神経 幹細胞 の分 裂方 向を コ ントロ ール す るこ と で 、 神経幹 細胞 の増殖 に重要な可能性が考えられます。

【用語説明】 LRRK1:

家族性パーキンソン病原因遺伝子LRRK2のファミリー分子。キナーゼドメインをもち標 的蛋白質をリン酸化する。

RNAi(RNA interference、RNAi干渉):

標的mRNAと相同な配列をもつ短い二本鎖RNAを細胞に導入する事で、標的mRNA を分解し、結果として標的蛋白質の発現を抑制する手法。

スピンドル微小管(紡錘体):

細胞分裂期に染色体を分配させるために形成される微小管を中心とした構造体。スピ ンドルの根元部分に中心体が存在する。

PLK1(Polo-like kinase 1):

細胞分裂期に重要なリン酸化酵素(キナーゼ)。

(4)

CDK1(Cyclin-dependent kinase 1):

細胞分裂期に重要なリン酸化酵素(キナーゼ)。 CDK5RAP2:

中心体構成蛋白質。小頭症の原因遺伝子のひとつ。 gTuRC複合体:

微小管を産み出す(nucleation)のに必要な複合体。 小頭症:

胎児期の神経幹細胞の増殖不足から大脳皮質の神経細胞が著しく減少し、脳のサイ ズが小さくなる疾患。

【論文名】 Nature Cell Biology

“PLK1-dependent activation of LRRK1 regulates spindle orientation by phosphorylating CDK5RAP2”

(PLK1依存的に活性化したLRRK1は、CDK5RAP2をリン酸化することでスピンドル配向 を制御する)

Hiroshi Hanafusa, Shin Kedashiro, Motohiro Tezuka, Motoki Funatsu, Satoshi Usami, Fumiko Toyoshima, Kunihiro Matsumoto

(花房 洋、慶田 城迅、手塚 基弘、船津 基暉、宇佐美 学史、豊島 文子、松本 邦弘)

参照

関連したドキュメント

は、金沢大学の大滝幸子氏をはじめとする研究グループによって開発され

昭和62年から文部省は国立大学に「共同研 究センター」を設置して産官学連携の舞台と

シークエンシング技術の飛躍的な進歩により、全ゲノムシークエンスを決定す る研究が盛んに行われるようになったが、その研究から

ときには幾分活性の低下を逞延させ得る点から 酵素活性の落下と菌体成分の細胞外への流出と

しかしながら生細胞内ではDNAがたえず慢然と合成

「心理学基礎研究の地域貢献を考える」が開かれた。フォー

さらに体育・スポーツ政策の研究と実践に寄与 することを目的として、研究者を中心に運営され る日本体育・ スポーツ政策学会は、2007 年 12 月

経済学研究科は、経済学の高等教育機関として研究者を